サンダーを支える“じゃない方”の男 デイブ・ブリス

スタッフの中でそれ(そっちじゃないということ)をジョークにしているよ。

 デイブ・ブリス(サンダーAC)

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NCAAを震撼させた殺人事件

2003年夏、行方不明になっていたベイラー大学のバスケットボール選手パトリック・デヘニーが遺体で見つかった。犯人はチームメイトのカートン・ドットソンで、NCAAはこの事件をきっかけにベイラー大学に調査に入る。

当時ベイラー大学のデイブ・ブリスHCはNCAAが調査に入ることを嫌がっていた、なぜなら亡くなったデヘニーをリクルートする際に奨学金の枠が空いておらずブリス自らデヘニーの学費を払うというルール違反を犯していたから。

ルール違反が発覚するのを恐れたブリスは“デヘニーがドラッグディーラーとして学費を稼いでいた”という嘘をでっち上げ、その嘘を突き通すようチームスタッフ・選手に強要する。

Reasonable Doubt | DISGRACED | AVAILABLE NOW on SHOWTME
録音されていたブリスの発言

デヘニーが死んだ今、我々が彼にお金を払っていたと言える者はいない。OKか?だから我々がすべきことは筋の通った疑いを作り出すことだ。

 デイブ・ブリス

結局、ブリスに脅されていたアシスタントの一人が録音していたブリスの発言を暴露したことで悪事が発覚し、2005年ブリスは実質NCAAから姿を消すことに。

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“じゃない方”の男

時は流れ2019年、長年チームの中心選手だったラッセル・ウェストブルックが去るなど選手編成が一新されたオクラホマシティ・サンダーはコーチ陣も大きく変えた。

“サンダーはデイビット・アキンユーイェ、デイブ・ブリス、マーク・ダグノート、ブライアン・キーフ、マイク・ウィルクスをコーチングスタッフとして加えた。”

デイブ・ブリス?

もちろん“この”デイブ・ブリスは“あの”デイブ・ブリスではない。

スタッフの中でそれ(そっちじゃないということ)をジョークにしているよ。イニシャルを使って違う名前で呼んだりね。自分にとっては大したことではないよ、頻繁に問題になることじゃないからね。

 デイブ・ブリス(サンダーAC)

右のいかにもヴィランな男があのデイブ・ブリス、左のクマのような男がじゃない方のデイブ・ブリス

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プレスティの一目惚れ

208cm115kgの恵まれた体格を活かしジョージア大学でプレーしたブリスは2008年に卒業した後、母校に残りボランティアアシスタントとしてコーチキャリアをスタートする。

翌年には恩師の紹介でヴァージニアコモンウェルス大学(VCU)でアシスタントとして勤務することに。そこでブリスは学生寮に住みながらわずかな稼ぎで生活していた、学業優秀で就職先はあったが自分が好きなバスケットボールに携わっていたかったから。特にNBAでコーチすることを目指している訳でもなかった。

元サンダーのエリック・メイナーもVCU出身。2019サマーリーグ、サンダーはブリスHC&メイナーACのVCUコンビだった。

チャンスは不意に訪れる。2010ドラフトに向けてラリー・サンダースをスカウトしに来たサム・プレスティGMが選手ではなくアシスタントのブリスに興味を示し、すぐVCUシャカ・スマートHC経由で「サンダーにこないか?」とオファーを持ちかけた。

そんなこと(NBAでコーチ業に就くこと)考えていなかった、だけど突然トビラが開いたんだ。シャカがとても喜んでくれて“行きなさい、NBAでコーチになれるチャンスを手にしたんだ”と言ってくれた。

 デイブ・ブリス

ちなみに2010ドラフトでビッグマンがほしかったサンダーは当日トレードで11指名のコール・オルドリッチを獲得、ラリー・サンダースは15位指名でバックスへ。

それにしても才能を見出されたブリスもスゴいが、大学に選手のスカウトに行ってコーチをスカウトして帰ってくるプレスティもスゴい。

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ポルジンギスの師匠

ブリスはサンダーでスコット・ブルックスHCのもと5年間ビデオコーディネーター、ビデオアナリスト、プレイヤーディベロプメントコーチ(選手育成担当)として務めた後、2014年にデレク・フィッシャーの勧誘でニックスのプレイヤーディベロプメントコーチに就任する。フィッシャーとブリスはサンダーで二年間一緒に過ごしていた。

(ブリスをニックスに勧誘したことについて)いつでも積極的な人に惹かれるし、そういう人が好きだ。彼は自分の仕事に誇りを持っているが現状に満足していない。

 デレク・フィッシャー

ニックスでの主なミッションはポルジンギスなどのビッグマン育成だった。

デイブみたいな人を毎日相手するのは自分にとって大きいことだ。彼は自分にとってデカくて強い、彼の相手がリーグに入ってから一番キツいことなんだ。毎日一緒に練習してアドバイスもくれる。時々怒って喧嘩してしまうこともあるよ、でもおかげで成長できた。彼はまさに自分のチームいてほしいコーチなんだ。

 クリスタプス・ポルジンギス

はじめは育成として始まったニックスでのキャリアだったが、フィッシャーはブリスの別の才能に気が付く。フィッシャーがニックスで導入したトライアングルオフェンスについてブリスはコンセプトや図をまとめて持ってきたのだった、頼まれてもいなかったのにも関わらず。そして二人はトライアングルオフェンスについて語り合う。

彼と過ごしていくうちに、彼の能力がビッグマンとの練習や選手育成だけに留まらないことに気付いたよ。

 デレク・フィッシャー

そして、ニックスで経験を積んだブリスは2018年サンダーに戻り、2019年にはついにアシスタントコーチに就任することに。

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ブリスの挑戦

サンダーにはラス、KD、ハーデン、PGのような殿堂入り確実の選手がいた。そんな選手たちから何も学ばなければ、正気じゃないよね。彼らの考えを聞き出すんだ“どこを見ていた?”“なぜそのプレーを選択した?”ってね。ニューヨークにはカーメロやポルジンギスがいたし、いまはクリス・ポールがいる。こうやって色々なバスケットボール観に触れられることを当たり前だとは思っていないよ。

 デイブ・ブリス

今、自分がやっていることに集中している。できれば、(あのデイブ・ブリスと同姓同名という理由ではなく)そのうち自分が成し遂げたことで人々に名前を覚えてもらいたいね。

 デイブ・ブリス

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