【記事訳】『スパーズとサンダーの共通点』+ サム・プレスティQ&A

スパーズとサンダーの共通点

クレイ・ベネットは自身のチーム(後のオクラホマシティ・サンダー)を引っ張ることができる人材を探していた。そして、彼が声をかけたのは12年間で4度目の優勝をしたサンアントニオで乗りに乗っている一人の若手だった。

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※2012年サンダーとスパーズのWestern Conference finalsの直前に書かれた記事。現在とは状況が異なる点もあり。

始めはスパーズを模倣していただけだったベネットのフランチャイズ構築のプロセスも今やWestern Conference finalsでの直接対決のフェイズまでやってきた。

サム・プレスティはサンアントニオでビデオインターンとしてキャリアをスタートさせ、後にシアトル・スーパーソニックスのGMとしてベネットに雇われた。サンアントニオを成功へと導いていた決まり事や規律はサム・プレスティに多大な影響を与えていた。サンアントニオは謙虚さ、自己犠牲、Family Atmosphere(家族のような雰囲気)に重きを置いており、プレスティはそうした意識をサンダーにも植え付けようとしていた。

プレスティ「NBA関係者は皆スパーズが成し遂げてきたこと、ここ数年でスパーズが築き上げてきた規律をリスペクトしていると思う。でも模倣するだけではなく全ての組織が自身のアイデンティティーを持たなければならない。我々が持続性のあるアイデンティティーや基礎を構築する上でスパーズのような組織を真似ようとしているのは事実だけどね。」

サンダーとスパーズの類似点はたくさんある。どちらもスモールマーケットでプレーしているし、生え抜きの中心選手がいる、そして海外選手の発掘が上手い。バスケットボール以外の面でもある。対戦相手の悪口を言わない、コート外のトラブルもほとんどない、自身が置かれた状況を当たり前のものと思わない。

「いつもみんなに言ってる話があるんだ。」 2005年にスパーズで優勝し現在はサンダーのバックアップを務めるナジー・モハメドはこのように言う。

「いかにサムが組織を築き上げてきたか、そして組織にマッチする選手を集めてきたか、から話そうか。ここにはHard WorkとFamily Atmosphereを理解している若手が集まってるんだ、すげえことだよ。若手がたくさんいるチームには今までも在籍していたことはあるが、そいつらが一番理解できていなかったのがFamily Atmosphereだ。やつらは“試合に出るチャンスをもらったら、オレの実力を世界中に知らしめて、次の契約でガッポリや”みたいなことばかり考えてたんだ。でもここにそんなやつはいない。こいつらはとにかく勝ちたい、上手くなりたいと思ってる。まるでベテランのようにオフにはしっかり体をケアしてるしね。」

モハメドはプレスティが信頼している人物。つい最近Gリーグ、オクラホマシティ・ブルーのGMに就任した。

プレスティがそんなサンアントニオスタイルを育む一方で、選手とコーチ陣は“それ”(Hard WorkとFamily Atmosphere)を実行し続け、その努力は2年連続WCF進出という形で実った。モハメド曰く“それ”はトップから首脳陣を通して組織に染み渡っていくものだが、フランチャイズにとって大事なのは“それ”を信じて実行する選手を集める能力である。モハメドはサンアントニオでティム・ダンカンをオクラホマでケビン・デュラントを目の前で見てきた、両者ともに目立つことに関心はなくハードにバスケットボールをプレーすることだけを追い求めている。

モハメド「“それ”を伝えることもできるけど、選手自身から芽生えてこないといけない。伝えたところで若い奴らが“それ”を実行しなかったら、自己流で何事も突っ走ってしまうかもしれないだろ。」

スパーズのRCビュフォードGMはプレスティを雇ってすぐに彼がインターン生ではなくなるのに長くかからないと悟った。プレスティはスパーズにトニー・パーカーを指名するように説得したのだった、彼は後にオールスターとなりスパーズのリーディングスコアラーにまで成長した。当時ポポビッチは「プレスティをクローゼットにしばらく隠しておこう、そうしたら誰も彼のことを知る由もない」という冗談を言っていた。最終的にプレスティのことは知れ渡り、今ではスパーズの強さの秘訣を知っている者としてスパーズに立ちはだかる。

永久欠番式典でプレスティとRCビュフォードに感謝するパーカー、「あなたたちはギャンブルした、自分ははじめのワークアウトで本当にひどかったから。」

ビュフォード「サムが築き上げたカルチャーの詳細までは分からない。しかし、サンダーカルチャーにとって大切なものはスパーズカルチャーにとって大切なものに似ていることは外部者視点でも分かる。」

2007年ベネットは30歳のプレスティを雇ったことについて、スパーズはNBAで超一流のフランチャイズだがプレスティがスパーズのもとで働いていたから雇ったのではなく自ら素質を見抜いてGMとして雇ったと話していた。そしてプレスティは始めから第二のスパーズをつくろうとはしないと言っていた。

プレスティ「同じ場所は二つない、それぞれが異なる状況下にあり、それぞれ異なるアプローチが必要になる。そうやってNBAは偉大なリーグになってきた。我々はスパーズに対して尊敬の念を抱いているが自分たちのアイデンティティーを確立しないといけない。もちろん長きに渡って成功を収めているフランチャイズで共有されているコアな価値観を我々も使っているのは確かだが。」

フランチャイズの間には明確な4つの違いがある、4つのチャンピオンシップだ(スパーズは1999、2003、2005、2007優勝している)。

プレスティ「我々が成長し続けるにつれてオクラホマシティ・サンダーのアイデンティティーが築きあげられていく、そう思いたい。この4年では起こっていないことだけれど。そして我々には長い道が待っているということを受け入れないといけない。」

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サム・プレスティ Q&A

One-on-One with Sam Presti
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Q. RCビュフォードと働いたことについて

A. RCとポップ(ポポビッチHC)、サンアントニオ組織の素晴らしい人たちのもとで働く機会がたくさんあった。自分にとって彼らの影響は大きかった、プロとしても人としても。

Q. スパーズでの思い出について

A. まだほとんど役割が与えられていなかったときでも、たくさんの勝利に恵まれていた。自分がよく思い返すことと言えば、選手たちが示していた“Consistency”(継続性)と“Profesionalism”(プロ意識)だ。それらはコーチポップとRCがチームに浸透させたもので、若い自分は大きな影響を受けた。

(中略)

Q. 元スパーズのスタッフについて、また彼らがオクラホマでカルチャーを築いていく上でどれだけ影響があったかについて(サンダーにはプレスティ含め元スパーズのスタッフが数名いる)

A. スパーズは、というよりもNBAでは全員が成功し続けたいと思っているはずだ。スパーズは優秀であり続けている。コート上、コート外、コミュニティーなどスパーズには様々な場所で築き上げてきた基準がある。そういった基準のもとで働く機会があった人は皆恩恵を受けるはずだ、自分自身の基準があがり築き上げられていく。我々には長い道のりが待っていて、スパーズのような成功は口先だけで到達できるものだとは思っていない。彼らがやってきたことは特別だ。先程言ったように、彼らは“優秀であり続ける”、我々は“成功し続ける”方法を探っている。その2つには大きな差がある。サンアントニオで人々と出会えたこと、スパーズにとって必須ではなかったのに自分にチャンスを与えてくれたことがどれほど恵まれていたことか感謝しない日は一日たりとてない。自分の人生に多大な影響を与えてくれた、一生感謝する。

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共通点考察

カルチャー以外の面でプレスティがスパーズの影響を受けていると感じる点について、特にロスター構成の点で。

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BIG3

スパーズと言えば、ダンカン・ジノビリ・パーカーのBIG3。プレスティはこの“インサイド”、“ウイング”、“ボールハンドラー”を中心にチームを構成していく。

  1. 2012ー16 イバカ、デュラント、ラス
  2. 2016ー17 アダムス、オラディポ、ラス
  3. 2017ー19 カーメロ/アダムス、ジョージ、ラス
2016年、長く中心を担っていたKDとイバカがチームからいなくなるやオラディポ、アダムスと大型契約を結んだプレスティ。個人的にはBIG3構築に対するプレスティの意識を強く感じた。

2012年にハーデンを放出した際、サラリーの問題で放出せざるを得なかったと言われているが、それだけではなくプレスティのBIG3ポリシーも絡んでいたように感じる。

インサイドのイバカ、ウィングのKD、ハンドラーのラスという三本柱でいくと決めていたとしたら、ハーデンには多くを出せなかったはず。

スモールラインナップの流行がもう少し早く来ていたらインサイドのKD、ウィングのハーデン、ハンドラーのラスというBIG3が見られたかもしれない。ハーデンのトレードには批判もあるが、軸&ポリシーを持ってサンダーの基盤を作り上げ、そして育て上げてきたプレスティが決断したことであれば100%支持する。

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SG

サンダーの代表的な先発SGはセフォローシャとロバーソン。ディフェンシブなSGをスタートで起用し、ベンチからオフェンシブなボールハンドラーを起用する。(ハーデン、ケビン・マーティン、ウェイターズなど)

同じ選手起用をしていたのがプレスティが在籍していた2000年代のスパーズ、先発でエースストッパーのブルース・ボウエンを、ベンチから強力なハンドラーのマニュ・ジノビリを起用していた。

ブルース・ボウエンは直近10年ほどの間、最高のペリメーターディフェンダーだった。彼の成功は努力と決意が報われるという証拠だ。このフランチャイズにおける彼の重要性は数値では測れない。分かりやすい事実を言うと、ブルース・ボウエンなしでは2003年、2005年、2007年にスパーズは優勝していなかった。

 グレッグ・ポポビッチ

(2017年ロバーソンと再契約した際のコメントNBAで最高のペリメーターディフェンダーの一人になりつつあることに加え、アンドレは完璧なチームプレイヤーで、ハッスルプレイヤーでエゴのない選手だ。サンダーのユニフォームを来た彼はいつだって闘志全開で全力プレーするとファンの皆さんは知っている。(中略)ドレがチームに残り、一緒に未来を築き上げていくことが楽しみだ。

 サム・プレスティ

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ドラフト

スパーズもサンダーも“raw talet”(身体能力、潜在能力は高いが、未熟な選手)をドラフトしがち。

スパーズでは例えば、カワイ・レナード、デジョンテ・マレーそしてトニー・パーカーなど。パーカーははじめスパーズでのワークアウトで全くシュートが入らなかったが、当時スパーズでスカウトを担当していたプレスティが才能に惚れ込んでおり、首脳陣にビデオを何度も見せもう一度ワークアウトするように持ちかけ指名に至った経緯がある。

サンダーだとファーガソン、ディアロ、ベイズリーとここ数年は色濃くこの傾向が出ている。ラッセル・ウェストブルックはその究極の例。

※スパーズとの大きな違いは、スパーズはドラフト後に“raw talent”のシュート力を伸ばしている点。シュート力を伸ばすことor優秀なシューティングコーチを発掘することはサンダーの長年の課題。

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