2020年夏、オクラホマステイト大学を卒業したリンディー・ウォーターズⅢは岐路に立たされていた。
大学でチームの主力として4年間プレーしたが、憧れのNBAどころかGリーグでもドラフトで名前が呼ばれることはなかった。ウォーターズは”postmates”という食事の配達代行の仕事に就いた、ピザやハンバーガーを車で配達する生活の始まりだ。
夢にまで見てきた世界への道は閉ざされたかのように思えた。
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謎のリーグ
NBAからもGリーグからも声がかからなかったウォーターズはそれでも諦めなかった。空いた時間があれば早朝だろうが深夜だろうがバスケットボールに打ち込んだ。
いつかチャンスがあるはずだから、そのときのために準備しておかないといけなかった。
リンディー・ウォーターズⅢ
そんなウォーターズはその”チャンス”を手にする、オクラホマのプロバスケットボールチームから声がかかったのだ。
しかし、”オクラホマのプロバスケットボールチーム”と聞いて誰もが想像するチームとは別のチームからだった。誘いは創設数年のリーグTBL(The Basketball League)に所属するエニッド・アウトローズというチームからだった。
※エニッドはオクラホマシティから車で1時間半ほどの町
ウォーターズはそこでチームをリーグに優勝に導く。
InstagramのDMで勧誘が来た、とにかくそこに行ったら何が起こるか興味があったんだ。それに何となく運命だと思った。(エニッドで)リーグ1位の成績で優勝もした。タフな環境だったよ、NBAみたいな贅沢はできないからね。でも、キャリアを始めるにはいい場所だった。
リンディー・ウォーターズⅢ
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TBLで優勝しシーズンを終えるとそこからは怒涛の日々だった。
まずはスペインの2部リーグのチームと契約を結ぶ。しかし、時を同じくしてオクラホマシティ・ブルーから声がかかりスペイン行きを取りやめる。
始めは誰だか知らなかった。でもシューティングストロークや流れを読む力を見て、そして彼の人物像を知って我々はすばらしい選手を加えることができたと分かったんだ。
グラント・ギブス(オクラホマシティ・ブルーHC)
始めは練習生としての参加だったが、1週間、また1週間とチームの滞在期間が延びていくと遂にロスタースポットを奪い取った。
シーズンが始まると磨いてきたシュート力を遺憾なく発揮し29試合で3P成功率51.3%(80-156)という驚異的な記録を残す。大学時代の通算3P成功率が39.0%だったことを考えるととてつもない成長だった。
こうして日々成長を続け、そして結果を残し続けると遂にそのときがやってくる。
エージェントから電話がかかってきたんだ、フェイスタイムで連絡がくるときはグッドニュースのときだ。そのときもフェイスタイムでかかってきて、”サンダーは君と2way契約を結びたがっている”と言われた。特に叫んだり、テンションが上がって泣いたりはしなかったよ。”これでなりたい自分に一歩近づいた”と思ったんだ。
リンディー・ウォーターズⅢ
現地2月10日、オクラホマシティ・サンダーはリンディー・ウォーターズⅢと2way契約を結んだ。
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夢のリーグ
サンダーと2way契約を結んだウォーターズは25試合に出場し、平均8得点&3P成功率36.3%の成績を残した。
現地3月30日に行われたアトランタ・ホークス戦では、高校時代の同僚トレイ・ヤングと対戦しキャリアハイの25得点&3P7本を記録。磨いてきた武器はNBAでも通用した。
ここまでたどり着くのに何をしないといけなかったのか正確な道は分かってなかった、でも他の人より一歩でも先に行こうとひたむきに努力してきた。そのときが来たら、絶対に準備ができているようにね。
リンディー・ウォーターズⅢ
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ウォーターズの活躍はコート内に留まらない。ネイティブアメリカンの家系として、意欲的にコミュニティーへの還元を実施した。
オクラホマで試合があるときは試合終了後もユニフォーム姿で集まったファンにサイン&写真対応を行っていた。ときには、アウェイでも同じ対応をしてきた。
ネイティブアメリカンのコミュニティーにおいて、子どもたちのロールモデルになりたい。彼らと顔を合わせたらちょっとでも話をして”諦めらめなければ夢が叶う”ということを伝えたいんだ。
そうすることでより自分が頑張れるし、この状況と機会に感謝の気持ちが湧いてくる。試合に出たときももっと全力を出し尽くさないといけないと思うしね。
リンディー・ウォーターズⅢ
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スティルウォーター(オクラホマ州の町でオクラホマステイト大学所在地)からエニッド、そしてオクラホマシティと物理的な距離は長くないかもしれないが、配達代行から始まり、InstagramのDMで勧誘されたプロリーグ、そしてGリーグとどんな選手よりも回り道をしてリンディー・ウォーターズⅢは夢の舞台に立った。
それでもまだ満足はしていない。
(オフについて)コントロールできることに集中する。そうすることで自分の強みもバスケットボールの知識もなりうる最高のレベルまで上げることができる。今まで以上にやる気に満ちてるよ。
リンディー・ウォーターズⅢ
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リンク
高校時代のチームメイト、トレイ・ヤング
大学の後輩、ケイド・カニングハム