【サンダー名選手列伝】カーメロ・アンソニー〜犠牲〜

Q.PFとしてプレーすること、あるいはベンチから出場することについてどう感じていますか?

「誰が?オレが?どこからその話が出てきたんだ?なあP(ポール・ジョージ)、オレはベンチ出場なんだってよ。」

2017年、トレーニングキャンプ直前に決まったトレードでカーメロ・アンソニーはサンダーへやってきた。オクラホマでの初会見でメロはベンチ出場について聞かれ笑った、“それはありえない”という呆れた笑い方だった。

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メロエフェクト

メロの前にトレードでサンダーに加入したポール・ジョージ、前年MVPのラッセル・ウェストブルックのトリオは“OK3”と呼ばれ注目を集めていた。

しかし、期待されていた“OK3”は開幕からつまづく。前半で大量リードをして、後半逆転されるという負けパターンを繰り返していたのだ。

オレたちがメロを加えたとき、3人の中心選手たちがどうやったらお互いを活かせるかを模索してた。

試合の始まりで20点リードをしてても、相手に追いつかれて逆転されてた。オレたちは自分たちがどれだけいいチームで、ポテンシャルがあるかは分かってたんだ。だからそれを示したら、油断してしまっていた。正直なところ、タレントに頼っていたんだ。

 アンドレ・ロバーソン

11月30日には9連敗中だったオーランド・マジックに逆転負けを喫し8勝12敗となった。この試合後、ウェストブルックは「責任は自分にある」と言った。

この泥沼から抜け出すためにオレたちは集中しないといけない。ここにずっといて、オクラホマシティが築き上げてきたスタンダードを知ってるオレがチームを引っ張ってそれを示さないといけないんだ。オレがやれば、状況は変わるはずだ。

 ラッセル・ウェストブルック

マジックに敗れた後、ウェストブルックはショックでしばらく動けなかった。

ウェストブルックの言葉通り、この敗戦をきっかけにサンダーは徐々に噛み合い始める。

自分たちの役割が分かって、お互いのために犠牲を払い始めたときにそれ(どうやったらお互いを活かせるか)がハッキリした。コート外でもみんな仲良くて一緒にいたし、お互いに気遣ってた。そういうケミストリーがコートでも現れてきたんだと思う。

 アンドレ・ロバーソン

噛み合い始めたサンダーでカーメロが引き受けた役割は“3番目の選手”だった。

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マジックに敗れた翌月、デンバー・ナゲッツ戦でカーメロはシュートを6本しか打たなかった(同じ試合でウェストブルックは28本打った)、メロ自身にとっては2012年以来の少ないシュート数だった。

勝ったから、自分が何本打ったかなんて関係ない。気にしてないよ。ラスの調子がよかったし、あいつがそういうときはオレたちはあいつのためにスペースを作ればいい。そんな試合もある、それは理解しとかないといけない。

 カーメロ・アンソニー

カーメロが“3番目の選手”としての役割を全うすると12月以降ロバーソンが怪我で離脱するまでは、スタートが揃ったときは15勝0敗とサンダーは完全に機能し始める。

メロが自分たちに本当にいい効果をもたらしていた。スペースをつくってくれたおかげで自分はあのシーズンはたくさんロールで得点できた。

 スティーブン・アダムス

このシーズンのアダムスはキャリアハイ平均13.9得点&FG62.9%、加えてピック&ロールのロール役としてポゼッションあたり1.22得点(リーグ8位)を記録した。出場時間の約8割はカーメロと共にプレーしており、実はOK3の恩恵を一番受けていた選手。

そんな献身的なメロの姿を見て影響を受けた若手選手もいた。

選手として競技者としてのメロの全てに影響を受けた、すごかったよ。

メロから学んだのはコミュニケーションだ、今でも試合に出たら自分がどこにいるか常に伝えるようにしてる。自分はチームのリーダーではないけど、自分の声で裏やヘルプサイドにいることを伝えるようにしてるんだ。メロが試合に出てるときはいつでもどこに彼がいるか分かった、“後ろにいるぞ”といつも叫んでたからね。自分もできる限りでかい声でチームメイトに叫んでる、メロから学んだんだ。

 テレンス・ファーガソン

子どものころカーメロにあこがれてコーンロウにしていたというファーガソン、「メロには秘密だよ」

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「すべてを犠牲にした」

このシーズン、冒頭の“ベンチ出場はありえない”旨のコメントがひとり歩きをして、カーメロ・アンソニーは自己中心的でわがままだという批判を浴びていた。

事実は違った、大学では1年生エースとして全米制覇を果たしNBAでもルーキー時代からチームのエースであり続けたメロはキャリア初の役割に苦しみながらも対応しようと必死だった。

“オレたちはおまえのためにここに来たんだおまえの能力、試合にもたらす影響力を信じているからここに来たんだ。それをやめる必要はない、オレたちが合わせる。”

2018年3月、デンバー・ナゲッツとの試合でカーメロは4Q残り3分ほどでコートに戻る準備をしていた。しかし、試合残り2分22秒、ジェラミ・グラントがリードを6点に広げる3Pを決めるとメロは試合に出ることなくベンチに戻った。

いいプレーをしているグラントを下げたくなかったのだ。

選手の調子がいいときはそのリズムを崩したくない。それが特にロールプレイヤーやベンチプレイヤーだったら自信になる。もちろん出たかった、でもそれはオレが決めることじゃない。コーチが決めることだ。

 カーメロ・アンソニー

サンダーは延長の末に敗れたがグラントはカーメロの言葉通り自信をつけた。

みんなカーメロがこのチームのために何をやってきたのかを知ってる。メロが自分のことを信じてくれたんだ、めちゃくちゃ大きいよね。

 ジェラミ・グラント

この試合から4Qにグラントが起用されることがあった、それはプレーオフでもあった。勝負どころでコート上にいないのはメロのキャリアで初だった。

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プレーオフ1回戦負けを喫した後、シーズン終了後の会見でカーメロはこうコメントを残した。

みんな、オレがほぼ全てを犠牲にしてきたことを分かってると思う。家族を置いて単身でオクラホマに来たし、チームのためにプレーも変えた、チームが機能するように何でも受け入れてきた。だから今考えてるのはこのタイプの選手として自分はキャリアを終えたいのか、ということだ。自分にはバスケットボールをプレーするエネルギーがたくさん残ってる。

 カーメロ・アンソニー

このシーズン限りでカーメロはサンダーを退団し、OK3はわずか1年で解散となった。

ウォーリアーズを倒すために、PGとメロを獲得したサンダー。メロのベンチ起用でレギュラーシーズンは勝てたかもしれないが、スターパワーに真っ向から対抗するには3人が同時出場しているときの最大火力をあげることが不可欠だったはず。結果はついてこなかったけど、メロを獲得したフロントも3人の同時起用を続けたドノヴァンHCも間違っていなかったと思う。

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「あいつらとやれて楽しかった」

オレ個人的には、本当にあいつらとやれて楽しかった。あのチーム、メンバーと楽しんだよ。確かに期待通りにはいかなかった。あのチームで勝つのが目標だったけどできなかった。

 カーメロ・アンソニー

カーメロによると、翌シーズンも一緒にやろうとチームメイトと話をしていたそう。ただ、サラリーの関係上それは叶わなかった、と。

OKCで過ごした時間は悪くなかった。本当に上手く機能してればよかったのに、と思うんだ。

 カーメロ・アンソニー

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おまけ:メロトリビア

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