【サンダー名選手列伝】アル・ホーフォード~プロフェッショナル~

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「サンダー入団を強く考えてた」

2016年WCF、オクラホマシティ・サンダーはあと一歩のところまでゴールデンステイト・ウォーリアーズを追い詰めたところから逆転されプレーオフ敗退を喫した。

雪辱を晴らすべく、そのオフにサンダーは全力で補強に動く。

補強の第1弾は長年チームの中心を担っていたサージ・イバカの放出。サンダーはイバカのトレードでビクター・オラディポ、アーサン・イリヤソバ、ドマンタス・サボニスを獲得し、戦力補強だけでなくサラリーダンプ(イリヤソバの契約は部分保障だった)にも成功した。

ドラフト当日に起こった衝撃のトレード、サボニスはその日11位で指名された選手。ロッタリーピックを手に入れるためには基本的に対価として別のロッタリーピックorオールスター選手が必要だが、プレスティはイバカで奪い取ってきた。

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そして、補強の第2弾として獲得を狙っていたのがFAのアル・ホーフォードだった。

ドラフト当日のトレード(イバカのトレード)でアル・ホーフォードと接触する機会を手にできたと思う、オラディポとサボニス、アーサンがいたからね。

 サム・プレスティGM

ホーフォードは当時サンダーのHCだったビリー・ドノヴァンの大学時代の教え子でフロリダ大学が全米2連覇を達成したときの中心選手。内外でシュートを打つことができ、プレーメイクもできる。加えて、ディフェンスは超が付くほどのエリート。

ケビン・デュラント&ラッセル・ウェストブルックと組むにはこれ以上にない人材で”サンダーに入団しNBAでも恩師に優勝をプレゼント”となればストーリー的にもバッチリ。実現したら以下のような強力なラインナップを組むことができサンダー入団への期待が高まっていた。

  • PG:ラッセル・ウェストブルック
  • SG:アンドレ・ロバーソン
  • SF:ケビン・デュラント
  • PF:アル・ホーフォード
  • C :スティーブン・アダムス
  • 6th: ビクター・オラディポ

これはサンダーの一方的なラブコールではなくホーフォードもサンダーに強い関心を持っていた。

サンダーに入団することを強く考えていた、もう一度コーチビリーの下でプレーできるチャンスだったからね。

 アル・ホーフォード

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しかし、当時FAだったデュラントの去就が不透明だったことでサンダーは決定打を打つことができず、ホーフォードは移籍先をセルティックスに決めてしまう。

ホーフォードは我々に関心を持ってくれていたが、ケビンの状況とタイミングの問題で契約には至らなかった。でも、それがフリーエージェントというものだ。

 サム・プレスティGM

結局、デュラントはウォーリアーズに移籍し優勝に向けて進んでいたはずのサンダーの歩みは止まってしまった。

翌年にはウェストブルックのFAも控えていたサンダー、長い目で見た際のサンダーの不透明さは優勝を狙うホーフォードにとってマイナスだった。

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「まだ自分がプレーできることを証明したい」

ホーフォードはセルティックスとの契約終了後、2019年に4年$109Mの大型契約でシクサーズに入団。

しかし、平均11.9得点(キャリア3年目以降で最低)&FG成功率45%(キャリア最低)とフィットせずわずか1年でチームから放出されてしまう。

知っての通り、選手として競技者として辛い時期だった。自分が築き上げてきたものが失われたんだ。自分はそれを(衰えだとして)受け入れるのか、もう一度初心に戻って練習し続けて次の挑戦に備えるのか、キャリアを見つめ直した。

 アル・ホーフォード

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ホーフォードの放出先はサンダーだった。

"2016年に本気で獲得を目指していたサンダーと本気で入団を考えていたホーフォードが4年の時空を越え遂に交じり合う"と書くと響きはいいが、状況は当時と180度違った。

サンダーには2016年当時に在籍していた選手は一人も残っておらず、サンダーはまさに再建に舵を切り出したタイミング。恩師ドノヴァンもチームを去っていた。対して、ホーフォードはキャリア14年目で狙うは悲願のリーグ優勝。

組織と個人で目指すゴールが違う中、ホーフォードはもう一度バスケットボール&自らの体と向き合うことに集中する。

OKCに行って最初に考えたのは自分が何をしないといけないかだ。キャリア14年目に再建のチームに在籍したかった訳ではないけど、絶対に優勝候補のチームにいないといけない理由もない。それはまた別の話だ。すぐに切り替えて、自分の体のケアとプレーに集中するようにした。(中略)とにかくここでいいシーズンを過ごして、まだ自分がプレーできることを証明したかった。

 アル・ホーフォード

 

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実はサンダーは「自らの証明」と「体のケア」を目標に掲げるホーフォードにとっては悪くない環境だった。スタッフの献身的な働きでプレーに集中でき、厳格なミニッツ制限(2日連続で試合があるとき2日目は休み)で健康的なシーズンを過ごせた。

色んな場所にいたけどここは本当にスペシャルだ。第3者視点でもオクラホマシティ・サンダーがいい組織だということは分かってけたど、どれだけスペシャルなところかは知らなかったんだ。ここで従事している人みんなが繋がっていてることに感心したよ。彼らのおかげで選手たちはプレーに集中できる。自分はそれを楽しんでるんだ。

 アル・ホーフォード

加えて、マーク・ダグノートHCがコンセプトにしている5outオフェンスはホーフォードのプレーにピッタリだった。

シェイはスコアする能力もあるし、しっかりプレーをつくることもできる。しかもその2つをうまく使い分けられるんだ。自分はその恩恵をたくさん受けてる。オフェンスも自分のやりたいプレーとフィットしているよ。

 アル・ホーフォード

https://thunder-quest.com/2020/12/19/gr_2020_21_pre3/

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迎えた2020-21シーズン、ホーフォードは平均14.2得点-6.8リバウンド-3.4アシストの成績を残し、言葉通り「自らの証明」を果した。

シーズン40試合を超えた時点でサンダーはプレーインまで数ゲーム差、周囲の予想を大幅に上回る。これは再建チームでも腐らずプレーしていたホーフォードのおかげに他ならない。

オレたちはすばらしい選手たちの集まりだ、ここに来て感銘を受けたのはみんなの気持ちなんだ。ここでみんなのためにできることは何でもやろうとやる気になるのは簡単だ。指示するだけのおっさんにはならないように頑張ってるよ。

 アル・ホーフォード

https://thunder-quest.com/2021/02/20/gr2020_21_rs29/
スタッツだけではなくプレーの質も高かったホーフォード。スパーズ戦ではラストプレーでシェイとの2メンゲームをコールされていたがマークマンのヤコブ・パートルが飛び出したのを見て瞬時にプレーを切り替えルー・ドートのブザービーターを演出した。(ドートが決めた後のホーフォードのジャンピングガッツポーズも見どころ)

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「サンダーが助けになってくれた」

2020-21シーズン、再建に向けてロスターもコーチングスタッフも大きく変えたサンダーは周りの予想に反して善戦を繰り広げる。

シーズン44試合を終えて19勝25敗でプレーインまで3.5ゲーム差、残りゲームが20試合以上残っていることを考えるとプレーイン出場の可能性は十分にあった。あったはずだったが、ここでサンダーからプレスリリースが出される。

まずは足底筋膜炎でシェイ・ギルジャス・アレキザンダーが長期離脱すること。加えて、健康体のアル・ホーフォードが残り試合すべてを欠場することが発表された。シェイなしではプレーイン出場が難しいと判断したサンダーが若手にプレータイムを与えるために下した決断だった。

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前述の通り、ホーフォードは平均14.2得点と過去5シーズンで最高の数値を記録しており「まだ自分がプレーできることを証明したい」というシーズン当初の目的は果たされていた。もう一つの目的が「体のケア」だった点でもホーフォードにとってこの決断は悪い話ではなかった、双方が歩み寄り合意した上での欠場だった。

このオフシーズン、アルがサンダーに加入してから我々は話を続けてきた。チームが変革期に入る中で彼が我々の力になり得るたくさんの方法についてだ。始めからアルはずっと完璧なプロであり、チームに対してコート内外で強い影響をもたらしてきた。

彼の仕事に取り組む姿勢やチームメイトのために全力を尽くす姿はすばらしい。彼自身にとってもチームの成長にとってもこのシーズンを最もよいものにするためにどうしたらいいか、我々はずっと正直に会話を続けてきた。

アルはすばらしい人物であり、我々が姿勢やメンタリティーを築き上げるしばらくの間もチームの一員として残り続ける。

 サム・プレスティGM

ここに来たとき、チームの方向性を理解した。サンダーには個々の目標が設定されていてその結果、自分はサンダーでいいプレーができていたと思う。

同時に若くて野心のある選手にとって、シーズンのこの時点で出場時間を得ることが彼らのキャリアと成長にどれだけ大切であるかを理解している。また、彼らにその機会を与えることが組織にとってどれほど大切かも理解している。

残りのシーズン、自分を支えてくれた選手たちの支えになり、彼らが正しくプレーする姿を見るのが楽しみだ。自分はチームに残りながら、トレーニングを続けていく。

 アル・ホーフォード

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シーズン終了後、当初の目的通りホーフォードはコンテンダーから声がかかる。それは古巣セルティックスからだった、出戻りはホーフォードの希望でもあった。

OKCのサム・プレスティGMが本当に自分の助けになってくれた。自分のことも自分の家族のことも暖かく迎え入れてくれて、シーズン終了までにお互いにとって最適解を見出そうと言ってくれた。

もちろん自分がしたいことだけをするわけにはいかない、サンダーにとっても利点がないといけないからね。それでも(セルティックスに戻るまでの)プロセスの中でずっとサンダーが助けになってくれたんだ。

 アル・ホーフォード

ホーフォードの妹アンナもサンダーが暖かく迎え入れてくれたことに感謝していた。ちなみにアンナはスティーブン・アダムスのファンで2016年ホーフォードが移籍候補にサンダーを挙げていたとき「兄がアダムスと一緒にプレーする?」とこっそりサンダーへの移籍を望んでいてくれたそう。

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2021-22シーズン、ホーフォードはセルティックスでインサイドの要として東2位のチームを牽引。

プレーオフではさらにギアをあげ、ECSFではプレーオフキャリアハイの30得点をあげた。ここまでプレーオフで平均37分出場、再びチームになくてはならない存在となった。

自分の能力も役割も、チームに何ができるかも分かってる。ずっと考えてたんだ、"チャンスを手にしたら、オレがまだできることを見せつけるんだ"ってね。

 アル・ホーフォード

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そして、ECFでヒートとの激闘を制しキャリア15年目にして初のファイナル進出を決めた。ファイナルに出場するまでに戦ったプレーオフの試合数141はNBA記録、アル・ホーフォードより苦労してファイナルに辿り着いた選手はいない。

”みんなと一緒にいられること、みんなの助けになれること、この瞬間にいられることが特別なんだ。ここに辿り着けて本当に嬉しい。”

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おまけ:ファイナル進出

キャリア初のファイナル進出を果たしたホーフォードに送られた賛辞。

Jaylen Brown, Marcus Smart & Coach Udoka Praise Al Horford's Impact On The Celtics

オレの横にいる人よりファイナルが相応しい人はいないよ。いつでもエネルギッシュで模範となり振る舞いをしていて、体のケアもしっかりするプロフェッショナルでオレたちのリーダーだ。オレにとってのベテランであり、メンターであり、兄貴であるアル・ホーフォードとこの瞬間を分かち合えることが誇らしい。

 ジェイレン・ブラウン

アルは数字なんて気にしない、勝利とチームのことだけを気にしてるんだ。他の誰よりもこの勝利が相応しい。

アルが戻ってきてくれたとき、チームに安心感が生まれたんだ。攻守でいつでも正しいプレーをしてくれるし、オレたちを落ち着かせてくれる。オレたちに足らないものを教えてくれるし、オレたちが学ぶ助けになってくれる。

 マーカス・スマート

アルはシーズンを通してすばらしい。トレーニングキャンプから体を絞っていてやる気に満ちていた、ボストンに戻ってきたいと言ってね。キャリアのこの時点において、44分出場してすべてを出し尽くしてくれた。大きい選手も小さい選手も守ってくれたし、何でもこなしてくれた。アルのリーダーシップは言うまでもない、ボーカルリーダーだけど背中でも示す。全員に信頼されてる。

 アイミ・ウドカHC

(ECSFで30得点をあげたときのコメント)アルはオレたちのリーダーだ、アルと3年間もチームメイトでいられて恵まれてるよ。オレはアルのおかげでたくさん成長できた、とにかくプロフェッショナルなんだ。自身の体を気遣ってるから、アルが大事な試合で活躍できることに何の驚きもないよ。

 ジェイソン・テイタム

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リンク

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