【サンダー事件史】ラッセル・ウェストブルック“Next Question”

via usatoday.com

ラッセル・ウェストブルックは自分が答えたくない質問に“Next Question”と言う。

多くの人が勘違いをしているが、これは間違いだ。

なぜならウェストブルックの“Next Question”のほぼ全てが答えたくない質問ではなく、答えたくない1人の記者に向けられていたからだ。その記者とはオクラホマ地元メディア The Oklahoman で40年以上スポーツ記事を担当しているベリー・トラメルだ。

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“I don’t like you”

2015年1月、サンダーがホームでウォーリアーズに勝利をおさめた。その試合後、ラッセル・ウェストブルック伝説の会見が繰り広げられることになる。

Q. 2Qに流れが変わりました、何が原因ですか?

ウェストブルック:“good execution”ができたと思う。

Q.勝負どころであなたとサージはいいプレーをしていました。何かきっかけがありましたか?

ウェストブルック:“good execution”ができた。

Q.スモールラインナップはどうでしたか?

ウェストブルック:“good”

Q.4Qだけで8アシストでしたが、相手のディフェンスにどう対応しましたか?

ウェストブルック:“good execution”ができた。

Q.トラメル:「何かに怒っていますか?」

ウェストブルック:ただあなたのことが嫌いだ。

Q.トラメル:「嫌いですか?」

ウェストブルック:そうだ。

Q.トラメル:「ニック(サンダーのコートサイドリポーター)のことも嫌いですか?」

ウェストブルック:ニックのことは大好きだ、あなたのことは嫌いだ。

Q.トラメル:「でもあなたは同じ答えしか返してくれません」

ウェストブルック:ああ、まだ他に質問あるの?

Q.今日はすばらしいプレーをしていました。あなたのキャリアでもトップクラスにいい試合だと思いますか?

ウェストブルック:“good execution”

Q.今日は危機感を持ってプレーしているように見えました。ここ最近欠けていた要素でしょうか?

ウェストブルック:“good execution”ができた。

Q.キャリアハイ17アシストでした。気分はどうですか?

ウェストブルック:“good execution”

Russell Westbrook "Execution" Interview
“execution”は直訳すると「実行、遂行」などの意味、バスケットボールで“good execution”なので作戦通りにプレーできた、やらないといけないことをしっかりできた、といった意味になるはず

信じられないかもしれないが、敗戦後ではなく自身のトリプルダブルで首位のウォーリアーズを撃破した試合後のインタビューだった。

全ての質問に同じ答えをし、面と向かって「嫌い」と言い放つ、これがラッセル・ウェストブルックとベリー・トラメルの始まりである。

ちなみにラスが嫌いと言った理由をトラメル自身はスコット・ブルックスがクビになる可能性について記事にしたことが原因だと自己分析している。

なぜウェストブルックが私のことを嫌いなのかは分からない。彼はコミュニケーションが得意ではないから。私の勘では週の初めにスコット・ブルックスの終わりが迫っていると記事を書いたことが原因だ。そこではサンダーは不安定な立場から抜け出さないといけないこと、クレイ・ベネットとサム・プレスティが変化を加えないといけないことを書いた。

 ベリー・トラメル

トラメルは地元メディアでありながら客観的な意見をズバリと書く記者、この前月には「誰が狂ったラッセル・ウェストブルックを止められるのか?」という記事を書いている

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“Don’t split us up”

次にウェストブルックvsトラメルが勃発したのは2017年のプレーオフだった。

ロケッツとのプレーオフ、サンダーはラスがいない時間帯で苦しんでいた。

Q.トラメル:スティーブン、ラッセルがベンチにいる時間に苦しんでいたのはここ3試合で2回目です。あなたはその時間に出場していますが、彼がベンチにいると何が起きますか?なぜヒューストンはいいプレーをするのでしょうか?ラッセルがいなくなることで相手に勢いがつくのでしょうか?

ウェストブルック:待って、スティーブン。オレは誰にもチームを分けられたくない。オレたちはみんなで一つのチームなんだ。オレがベンチに行こうが、スティーブンが試合に出ていようが、みんなで試合をしてる。オレたちを分けないでくれ、分けようとしないでくれ。ラッセルvsヒューストン、ラッセル以外vsヒューストンなんかじゃないんだ。オレたちはチーム一丸となってプレーする、それだけだ。

Q.トラメル:ラッセル、分かっています。私はあなたたちを分けようとしているわけではない。でもこの3試合で2回目です、あなたがベンチにいくと…

ウェストブルック:もういいよ。

Q. トラメル:だから私は何が起きているのかを知りたいだけです。

ウェストブルック:“ラッセルとチームがうまくプレーできていない”と書いてくれ。“ラッセルがいないとチームがうまくプレーできない”とは書かないでくれ。オレたちはチームなんだ。

Q. トラメル:ラッセル、そうかもしれないけど、これは正当に認められているスティーブンへの質問です。

ウェストブルック:オレとあなたの問題じゃない。“Next question”

Q.トラメル:認められている質問ですよ。

ウェストブルック:“Next question…Next question…Next question”

Q.トラメル:私は録音を続けます、まだスティーブンに答えをもらっていないので。まだ彼は一言も発してません、もしスティーブンが答えたくないのであれば仕方ありませんが。

ウェストブルック:“Next question”

「スティーブンへの質問です」の後の“そんなん言われても隣の人がずっと喋るんですもん”みたいな感じのアダムス

これが記録に残る最古の“Next question”である。(27秒間で5“Next question”なので36分換算で399“Next question”、おそらくキャリアハイ)

この時の受け答えでラスのリーダーシップは高く評価された、おそらく質問者がトラメルでなければここまで熱くラスが語ることはなかったはず。

このシーズンの前には「ケビン・デュラントがチームを去ったからといってウェストブルックをトレードに出してはいけない、ウェストブルックはオクラホマ殿堂に値する人物であり、Mr.サンダーになりうる人物であり、チェサピークエナジーアリーナの入り口に銅像を建てられるべき人物であり、サンダーに優勝をもたらしうる人物だ」と熱い記事を書いていたトラメル

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“Next quetion”

三度、ウェストブルックvsトラメルがスポットライトを浴びたのは2019年プレーオフだった。

GAME1、2と立て続けにトラメルの質問に“Next question”と回答すると今までのようにSNSでその様子が拡散された。

しかし、今回は今までとは違った。2年前のプレーオフでは仲間をかばうような形で“Next question”を使ったが今回はごく普通の質問だったし、4年前に“I don’t like you”と言い放ったときと違って今回は全米放送だった。

加えて、ラスがプレーオフに至るまで3ヶ月以上に渡ってトラメルの質問に対して“Next question”と言い続けていたことが発覚しラスのメディアに対する姿勢は広く批判されることになった。

リーグとして慎重にならないといけない。メディア対応は我々の仕事のひとつだ。ファンに情報を届けないといけない。すばらしい答えをする必要はないが、コミュニケーションを取ろうとしないのは危険だ。

 スティーブ・カー

「サンダーはウェストブルックとトラメルの間に入るべきか?」という質問に「私の答えるべき質問じゃない、“Next quesiton”」と答えたカー

そして、この出来事を「なぜ私がラッセル・ウェストブルックに質問しつづけるか」というひとつの記事にする記者の鑑ことトラメル。

ラッセル・ウェストブルックは私の質問に答えない、今シーズンのほとんどでだ。それなのになぜ私が質問し続けるかを聞きたがる人がいる。

例え答えが貰えないとしても私は質問し続ける、なぜならメディアは何でもかんでもウェストブルックの思い通りにさせてはいけないのだ。

 ベリー・トラメル

Why I keep asking Russell Westbrook questions
JUL 2, 2021 - Westbrook likes to run things, and the Thunder has been quite accommodating in letting him do exactly that

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反響が大きく、広く批判をされたウェストブルック。

さすがに“Next quesiton”はもう使えなくなったGame4の後、遂にトラメルの質問にラスが答える。

“That’s a good question, not sure.”「それはいい質問だ、分からない。」

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ここまでで「ウェストブルックは最低な奴だ」と感じる人も当然いて1人の記者を無視し続けた事実は否定できないけど、ひとつ擁護するとラスは試合モードのスイッチが入ると人格が変わる。そのスイッチは試合後のインタビューの時間ではまだオフになっていない、あれだけの闘争心を簡単にオンオフで切り替えられないのだ。

もちろんオフのときのラスはいつでも笑顔のナイスガイ。

裸足でボウリングするアダムスについてニコニコでインタビューに応じるラス

そして、それはトラメル自身も理解している。

私はウェストブルックと争いたいわけではない、選手として彼のことが大好きだし、ここにいてくれて嬉しい。彼がオクラホマシティにいてくれたおかげで私の記事は本当に本当によくなった。

彼が悪い奴だとは思わない。彼にはシーズン中、別の顔があって、インタビューとなると彼はそのキャラクターを演じるのだと思う。その彼は厳しくて、そして怖い。でも私は質問を続ける、なぜならそれ以外の選択肢はないからだ。

 ベリー・トラメル

まさかのツンデレ要素をぶち込んでくるトラメル、そんな需要はこのブログ以外ではない

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後日談

メディア対応が批判された翌シーズン、ウェストブルックはトレードされた。代わりにやってきたクリス・ポールの会見での一幕だ。

ポール「ベリー・トラメルじゃないか。久しぶりだね、元気?」

トラメル「そんな風に軽く私を扱ったら、世間から叩かれますよ」

オクラホマシティ・ホーネッツでプレーしていたポールは15年ぶりにオクラホマに帰ってきた、トラメルは当時からいた記者でポールも覚えていた

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