世の中には揺るぎない事実がある。
人は肺で呼吸する、太陽は東から昇り西に沈む、そしてオクラホマシティ・サンダーのシュートは入らない。
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リーグ最低オフェンス
どれだけ今季のサンダーオフェンスがひどいのかを表す4つの基礎スタッツがある。
項目 | 数値 | 順位 |
平均得点 | 101.2 | リーグ最下位 |
FG成功率 | 41.8% | リーグ最下位 |
3P成功率 | 31.3% | リーグ最下位 |
平均アシスト | 21.4 | リーグ最下位 |
特に3P成功率はここ8年(”trust the process”時代のシクサーズ以来)で最低。この数年で3Pに対する考え方が変わり、その価値が大きく上昇したことを考慮すると壊滅的な記録だ。(13ー14シクサーズの3P試投数は1試合平均22.5本、対して今季のサンダーは1試合平均37.5本)
ではサンダーは何の作戦もなく雑なオフェンスをして、雑にシュートを外しているのか?
細かくスタッツを見るとどうやらそうではなさそうだ。
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オフェンスコンセプト
サンダーのHCマーク・ダグノートが掲げるオフェンスフィロソフィーは「ペース&スペース」、就任当初から口にしており試合後に選手を褒めるときも「いいペースでプレーしていた」というフレーズをよく使う。
これがどのようにスタッツに反映されているのか、プレータイプ別のスタッツを見て行く。
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プレータイプ別スタッツ
ドライブ
サンダーのドライブ数は1試合平均63.1回でリーグトップ。ドライブからのパス数(平均27.5回)、フリースロー試投数(平均7.4本)もリーグトップ。
NBAがドライブをスタッツとして記録し始めた2013‐14以降で1試合平均60回以上を記録しているチームは2チームしか存在しない。2020ー21サンダーと2021ー22サンダーの2チームのみだ。
ダグノートサンダーの幹となっているのがこのドライブで、そしてその屋台骨となるのがエース シェイ・ギルジャス・アレキザンダーである。
オレたちは自分たちが目指すバスケットボールを分かってる、それはドライブでペイントを攻めることだ。ペイントを攻めることで最高のシュートを生み出せる。ほとんどのフリースローはペイントで生まれるんだ。チームとしてそれを理解しているし、みんなが毎試合そうやってプレーしようとしてる。
シェイ・ギルジャス・アレキザンダー
https://thunder-quest.com/2021/12/07/2021_22_season23/
(ドライブは)毎試合オレたちがやろうとしてることだ、それがオレたちのベストオフェンスになることは分かってる。今日はとにかくペイントを攻めようとしてそれができた。あとはそれを得点するだけだった。
シェイ・ギルジャス・アレキザンダー
https://thunder-quest.com/2022/01/12/2021_22_season40/
自分たちがペイントを攻めたら何かいいことが起こるんだ。シェイはドライブで自身の得点も味方の得点も演出できる。ペイントを攻めてるときはいいプレーができて、簡単なシュートで得点できる。
ジョシュ・ギディー
https://thunder-quest.com/2021/12/24/2021_22_season31/
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キャッチシュート
サンダーの1試合平均キャッチシュート数は29.8本でリーグトップタイ。
キャッチシュートの数字はドライブの数字に連動している、インサイドを攻めてディフェンスを収縮させた後にアウトサイドに展開するという教科書通りのオフェンスというわけだ。
(ギディーとシェイについて)二人ともいい展開をしていた、いい判断して相手のディフェンスを切り開いていた。二人ともドライブができるから、我々はそこからオフェンスを展開できる。
マーク・ダグノート
https://thunder-quest.com/2022/01/22/2021_22_season45/
自分たちが一番いいプレーができているときはドライブして、ペイントをアタックしてオープンショットをつくってるときだ。それこそがオフェンスでやろうとしていることで、今日はそれがよくできていた。
シェイ・ギルジャス・アレキザンダー
https://thunder-quest.com/2022/01/01/2021_22_season35/
また「ペース&スペース」をコンセプトとしたこのドライブ&キックアウトのオフェンスにはもう一つの狙いがある、それは選手の育成だ。
一度ディフェンスのズレをつくったら、そのズレを活かし続けないといけない、素早い判断がその際の肝になる。シュートを打つべきか、パスをすべきか、ドライブをすべきかその判断がどのポゼッションでも大切だ。現代NBAはよりディシジョンメイキングのリーグになっている。だから我々は選手の成長のためにキャリアの早い段階から素早い判断が要求される状況でプレーさせている、それができるようになるのはとても大事だからね。
マーク・ダグノート
例えば、ESPNのインタビューでギディーは「ディフェンスは細かく指導をされるが、オフェンスは自由にプレーするように指示されている」と答えていた。サンダーはある程度のミスを許容し選手自身に判断させることを大切にしている。
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ポストアップ
サンダーのポストアップ数は1試合平均1.3回でリーグダントツ最下位、「ペース&スペース」をコンセプトに掲げるダグノートオフェンスではポストは使わない。
1秒、2秒とボールを持って止める時間が増えるとディフェンスがセットされる。そうするといいシュートを打つ機会もいいドライブをするチャンスも逃すかもしれないし、そこからの展開もなくなるかもしれない。
デリック・フェイバース
ポストアップ数はNBAが集計し始めた2013ー14シーズン以降最低の数字、とにかくインサイドに人を配置せず(ポストアップ数史上最低)スペースを広くとり外からインサイドをアタック(ドライブ数史上最高)するということを徹底している。
例えば、今季出場機会ほとんどなくウェイブされたガブリエル・デックについてダグノートは「デックはいいポストプレイヤーだ、だけどポストは我々のオフェンスではない」というコメントをしている。
また、今季センターとしてスタートで起用されているジェレマイア・ロビンソン・アールについては以下の通りコメント。
センターは本当に独特なポジションだと思う、そのポジションの選手でチームのプレースタイルや攻め方が変わるんだ。個人個人で見ているわけではなく、試合に出ている残りの選手にどういったインパクトを与えるかを評価しようとしているよ。
(JREについて)いいシュートを打っていたし、いい読みをしていた。オフェンスでは色々できて、ドライブからキックアウトもできるしポップもできるしシュートもできてタフだ。
マーク・ダグノート
https://thunder-quest.com/2021/10/11/2021_22_preseason2/
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ピック&ロール
サンダーはピック&ロール1試合平均22.6回でリーグ4位。
サンダーのピック&ロールには特徴がある、それは両コーナーを埋めた状態(コートが目一杯広がった状態)でピック&ロールをするということ。
上の記事によると今季のサンダーは「両コーナーを埋めた状態でのピック&ロール」を100ポゼッションあたり50.89回しておりリーグ2位の数字、回数が一番多いのは現在オフェンスレーティングリーグ1位のジャズ。
※上の記事は「両コーナーを使うピック&ロールがリーグの主流で最強」という記事だが2位がサンダーのせいで説得力が一気に落ちている
実はオフェンスレート1位ジャズのオフェンスもドライブが多く(リーグ5位)、ポストアップが少ない(リーグ下から4位)、そしてスペースを広く使った(両コーナーを埋めた)ピック&ロールを好んで使う(リーグ1位)という特徴があり、サンダーとコンセプトは近いように感じる。
サンダーがやろうとしているのは現在リーグ最強オフェンスをさらに尖らせたオフェンス、と言えそう?(ジャズはFG成功率リーグ3位&3P成功率リーグ6位なので同じ扱いにしたら怒られそうだが)
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その他
ハンドオフ1試合平均3.3回でリーグ最下位。
オフスクリーンからのプレー1試合平均2.5回でリーグ最下位。
“ボール”を動かすことを重要視しているダグノートオフェンスではオフボールで”人”が動きボールの動きが少ないハンドオフとオフスクリーンの優先度は低いということ?
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まとめ
プレータイプ別のサンダースタッツをまとめると以下の通り。
項目 | 数値 | 順位 |
ドライブ | 63.1 | リーグ1位 |
キャッチシュート | 29.8 | リーグ1位タイ |
ポストアップ | 1.3 | リーグ最下位 |
ピック&ロール | 22.6 | リーグ4位 |
ハンドオフ | 3.3 | リーグ最下位 |
オフスクリーン | 2.5 | リーグ最下位 |
並べるとやることやらないことがはっきりしていて、「ペース&スペース」というコンセプト通り&狙い通りのオフェンスをしていることが分かる。
オクラホマシティ・サンダーは無秩序なバスケットボールを雑にやっているのではなく、一生懸命やるべきことをやりシュートを外しているのだ。サンダーファンとしてこの愛すべき下手くそ集団を応援せずにはいられない。
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