スタッツから見るスティーブン・アダムス~ガードにとって夢のような選手~

ドリブルができない、3Pが打てない(※7~9月を除く)、平均20得点をとるような得点力も毎試合2,3回ブロックするようなリムプロテクト力もオールディフェンシブチームに選出されるような圧倒的なディフェンス力もない。そんな選手が現在のNBAでスタート起用されているとなれば奇跡と言えるかもしれない。

スティーブン・アダムスはまさにそんな選手だ。ここではなぜアダムスが今もNBAで生き残っているのかを数値から見て行きたい。

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「ガードにとって夢のような選手」

2021-22シーズン、デズモンド・ベインは得点を前シーズンから倍以上に伸ばし西2位のグリズリーズにとってなくてはならない選手へと急成長を遂げた。

倍増したベインのシーズン総得点だが、プレータイプ別に見ると特定分野で著しく伸びていることが分かる。それは「カット」「ハンドオフ」「オフスクリーン」の得点(図1)だ。

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その要因をESPNの記者ザック・ロウは以下のように分析した。

なぜメンフィス・グリズリーズがヨナス・ヴァランチュナスからスティーブン・アダムスという一見ダウングレードにも思えるトレードをしたか疑問に感じているコメンテーターもいる。(中略)しかし、ベインの急成長はヴァランチュナスとアダムスのトレードの成果だ。ヴァランチュナスはポストでたくさんのプレーを任されていた。一方、アダムスはポストプレーを自らしようとはしない屈強なスクリナーで例えるなら水をやる必要のない植物だ。ヴァランチュナスがいてはこの環境をベインに与えることはできなかった。

 ザック・ロウ

ロウは記事の中でアダムスとベインのハンドオフプレー(&ハンドオフをフェイクにしたバックドア)を絶賛しており、「2人はすばらしいケミストリーを築いている」と評した。アダムスとのプレーが合っていることはベイン自身も明言している。

スティーブンは本当にアンセルフィッシュでパスを回そうとしてくれるから、自分に合うんだ。

 デズモンド・ベイン

昨季ベインはハンドオフから158得点(リーグ2位)を記録、内76得点がアダムスからのアシストによるものだった

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アダムスの影響はベインだけでなくチーム全体にも波及している。昨季、アダムスはスクリーンアシスト416個でリーグトップだった。

すごいんだ、スクリーンでオレたちのオープンショットをたくさん作ってくれるんだから。スティーブンがチームにいてくれて嬉しいよ、コーチも他の選手もそう思ってる。危険な選手で、オレたちの柱でアンカーだ。スティーブンにたくさんのことを任せてるけど、毎試合それをこなす準備をしてくれている。

 ディロン・ブルックス

知っての通り、スティーブンはものすごいスクリナーだ。あの技術でボールハンドラーをフリーにできる、それだけでなくパススキルやドリブルハンドオフスキルもあるからね。

 タイラー・ジェンキンスHC

そんなアダムスに相棒は最大限の賛辞を贈った。

スティーブンは体がデカくてスクリーンが大好きなんだ、ビッグマンでスクリーンが大好きな選手と初めて一緒にプレーした。しかも上手いんだ、ガードにとって夢のような選手だよ。

 デズモンド・ベイン

ジャ・モラントもアダムスの恩恵を受ける選手、シールスクリーンはサンダー時代にラッセル・ウェストブルックとプレーしているときから続けていたプレーでお手の物

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「ただそこに立っているだけ」

”おそらく全会一致でNo.1の選手がいる、スティーブン・アダムスだ”

自らがホストを務めるポッドキャストで「フィジカル最強のNBA選手は誰か?」という議題が挙がるとダンカン・ロビンソンは開口一番アダムスの名前を出した。

“とにかくデカくて信じられないくらい強い、特にオフェンスリバウンド(以下ORB)では驚異的な存在だ”

Duncan Robinson On The Undisputed Strongest Player In The NBA

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アダムスがORBで無類の強さを発揮するのはサンダー在籍時からで2017-18&2018-19シーズンはORB数がディフェンスリバウンド(以下DRB)数を上回るという変態スタッツ(表1)を叩き出している。当時のチームメイトもアダムスのORBには絶大な信頼を置いていた。

リーグにスティーブンと同じだけ強くて同じだけ跳べる選手はそんなにはいないはずだ、そのカテゴリーではトップだよね。シュートを打ちたいときに打てる、(外しても)スティーブンが取ってくれるって知ってるからね。オレもラス(ラッセル・ウェストブルック)もメロ(カーメロ・アンソニー)も同じように思ってる、そのおかげでいいリズムでシュートが打てる。それがいいシュートだろうが悪いシュートだろうが、スティーブンがそこにいてくれたら得点を取ることができる可能性がある。だからみんなアグレッシブになれるんだ。

 ポール・ジョージ

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2021-22シーズン、アダムスはリーグ1位のORB349本を記録した。

グリズリーズはチームとしてもORB数でリーグ1位に輝き、セカンドチャンス得点でも1位を記録。元々グリズリーズは前シーズンからORB数リーグ2位&セカンドチャンス得点1位と強みにしていた分野だったが、アダムスが加わったことで新たな武器を手にした。

それはセカンドチャンスシチュエーションでの3P(表2,3)だ、3P成功数126本(リーグ1位)&成功率39.5%(同3位)でどちらも前年から大きく数値を伸ばしている。ここでもアダムスのパススキルと視野が活かされているという訳だ。

スティーブンはORBをたくさん取る。取ったらデカい声で(「パスをくれ」と)名前を呼ぶんだよ。叫び続けてくれ、って言われてるしね。

 デズモンド・ベイン

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そんなアダムスは今季グリズリーズのシーズンORB記録を樹立した際にそのコツについて語った。

(ORBを)そんなにたくさん記録したくはないよ、だってみんながシュートをそれだけ外してるってことだからね。(ORBのコツは)ただそこに立ってるだけだ。シュートが放たれた逆サイドに行って立っていたらいい、大体ボールはそこに落ちてくる。デニス・ロッドマンみたいにボールの回転を研究することもできるかもしれないけど、それは別次元の話だ。自分にはアホすぎてそれはできないよ、そんなことに脳細胞を使わなくてもただ立っとけばいいんだ。

 スティーブン・アダムス

ちなみにDRBが少ないのは苦手だからではない、今季ボックスアウト数はリーグ1位を記録。(本人が語っているわけではないがおそらく)ボールプッシュできる選手の手元に行くようにDRBはチームメイトに譲っている。

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「誰よりも早くボールに触ったらいい」

数年前にある動画が話題になった。

ラッセル・ウェストブルックとカーメロ・アンソニーが試合開始直後にやるルーティンでメロはティップされたボールを取ったら後ろを向いてラスに向かってボールを転がすというものだ。それは毎試合のように行われていた、そう“毎試合のように”。

アダムスはジャンプボールで勝ち続けていたのだ。

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アダムスはジャンプボールに滅法強い、Other Basketball Stats によるとアダムスは昨季ジャンプボールで勝利数(71勝)&勝率(77.2%)ともにリーグトップ。(「ジャンプボールの勝敗が記録されているサイトなんてないだろ」と思って検索したらすぐにヒットした、NBA変態スタッツオタクに感謝)

またジャンプボールで通算525勝はNBA史上18位で通算勝率69.7%は勝利数歴代TOP25の中では4位(表4)とアダムスはリーグ史上でも屈指のジャンプボーラーなのである。(こちらは NBAstatsr より、NBA変態スタッツオタクに感謝)

※記録が残っている1996-97シーズン以降のレコード

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そんなアダムスのジャンプボール極意は“高く跳ぶ必要はない、誰よりも早くボールに触ったらいい”というもので、早く触るために審判一人ひとりのジャンプボールの投げ方や癖を頭に入れている。ワンポゼッションを争うバスケットボールの競技に置いてジャンプボールで確実に勝利をもぎ取ることができるというのは見過ごすことができない能力だ。

我々はゲーム開始時にボールを保持してとにかくいいスタートを切りたいと考えている、だからジャンプボールを大切にする。スティーブンはその重要さを理解しているのだと思う。

 ビリー・ドノヴァンHC

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スクリーン、オフェンスリバウンド、ジャンプボール。誰も注目しないような要素にしっかり向き合っているからこそアダムスは現代のNBAでも生き残ることができている、そしてそれは数値に現れているのである。

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