スタッツから見るシェイ&ギディー~サンダーの未来~

”難しいね”

サンダーが昨年ドラフト6位で指名したジョシュ・ギディーはサンダーのエースであるシェイ・ギルジャス・アレキザンダーとのプレーについて聞かれると正直にそう答えた。

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「時間がかかる」

サンダーが誇る新進気鋭のバックコートデュオは機能していると言えるのか?スタッツ上では”NO”という答えになりそうだ。

表1はシェイ&ギディーの出場/不出場時のチームスタッツを示したもの。2人が揃ってコートにいる時間は得失点レートが-10.8得点となり、それぞれが個々で出場しているときの方がチーム成績が良いことが分かる。

ギディー自身もシェイとのプレーについては”難しい”と前置きをしてこう語っている。

難しいよ。特に自分とシェイは2人ともボールハンドラーだからね、2人で上手く機能する方法を模索してきた。ジェイソン・テイタム&ジェイレン・ブラウンやデイミアン・リラード&CJ・マカラムみたいにボールハンドラー同士のデュオを知っていると思うけど、自然と噛み合う訳ではない。機能するには時間がかかるんだ。

 ジョシュ・ギディー

ギディーはボールハンドラー同士のコンビとして2例挙げているが、彼らとは圧倒的に異なる点がある。テイタム&ブラウン、リラード&マカラムには3Pシュートがあるが、シェイ&ギディーには3Pがない。今季の3P成功率はシェイが30.0%でギディーが26.3%だ。

3Pシュートやスペーシングに重きを置く現代バスケットボールに置いて、シュートが入らないバックコートコンビを機能させることは難易度が高いのかもしれない。

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「自己犠牲が必要だ」

では、2人の共存は不可能なのかというとそうではないはずだ。シェイ&ギディーが機能するために鍵になりそうな数字がいくつかある。

オフボール

まず1つ目のキーポイントがオフボールでのプレーだ、2人にはそれぞれオフボールでの強みがある。

まず、ギディーの強みはカッティング。空間把握能力はボールを持っていようが持っていなかろうが関係はないようで、空いたスペースにタイミングよく飛び込みのが非常に上手い。そして、カッティング後は確実にフィニッシュする。

そして、意外かもしれないがシェイのオフボールでの強みはキャッチシュート

3Pが入らないシェイだが、キャッチシュートに限れば過去3シーズン連続で3P成功率は40%を超えている。これはリーグで16人しか記録していない数値でシェイはキャッチシューターとしては優秀である。

シェイの3P成功率が低いのはドリブルからのシュートが多いため、今季開幕当初こそ高確率で決めていたステップバック3Pも最終的には成功率27.2%(40-147)と低調だった。

シェイには数字では表せないもう一つ強み、オフボールでの経験がある。2シーズン前にはクリス・ポール&デニス・シュルーダーと共に3ガードでプレーしており、オフボールでプレーできることは証明済だ。そして、オフボールの大切さも理解している。

(2年前はクリス・ポール、デニス・シュルーダーと一緒にプレーしていたからオフボールでのプレーは)もちろん分かってるよ、自分が一番やりたいプレーではないけど本当にいいチームになるために自己犠牲は必要だ。そのシーズンで学んだ、オレたちはめちゃくちゃいいチームだった。チームにはボールを持ったときに脅威となれる選手がたくさんいたし、全員がいいチームになるために自己犠牲を厭わなかった。だから、いいチームだったんだ。

 シェイ・ギルジャス・アレキザンダー

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ラインナップ

2人同時オンコート時に得失点レートが−10.8得点になるシェイ&ギディーだが、ある条件ではこの数字が劇的に改善される。

それは2人+ケンリッチ・ウィリアムスが出場している場合だ。

トータル時間こそ短いがこの3人が同時にコートに立っている98分間は得失点レートが+17.2得点

ケンリッチはオフェンスではカッティングあり&キャッチシュートありとオフボールでも2人をサポートでき、3人目のハンドラーとしてもある程度計算できる。スモールサンプルだが、ここ2シーズン合計でケンリッチはアイソレーションからのシュートでFG成功率63.6%(28-44)を記録を残している。 加えてディフェンスも1~4番までタフに守ることができ、リバウンドも弱くない。

痒い所に手が届く何でも屋がハンドラー2人の穴を埋め、チームの流れを良くしていると言えそう。

ギディー(19歳)はトレーニングキャンプのときからケンリッチ(27歳)のことを"my boy"と呼び、一緒にプレーするのが楽しいと話していた。マーベリックス戦で炸裂した阿吽の呼吸は今季のハイライト。

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「リーグでも屈指のバックコートデュオになる」

これらの数値を元に2人同時出場時のチーム能力を最大限発揮する方法を考察すると、ギディーがメインハンドラーを務め、シェイがセカンドハンドラーとしてギディーのキックアウトからキャッチシュートもしくはドライブ、そしてそのドライブにギディーがカッティングで合わせるというのがサンダーの理想となりそう。勝負どころでケンリッチを3人目の選手として添えたら完璧だ。

これは単なるファンの妄想ではなく実際にサンダーでも始動しつつある案である。それを実行していたのが今季オールスターブレイク明け最初の試合サンズ戦だった。

この試合はチームとして狙ってギディーをメインハンドラーに据え、試合後にはマーク・ダグノートHCがギディーメインハンドラー作戦をチームとして進めていきたい旨を語っていた。

(サンズ戦後、シェイとギディーのプレーについて)我々はジョシュの能力を最大限活用しないといけない、とても素晴らしいイニシエーターでプレーをクリエイトできるからね。チームのポテンシャルを発揮するためにはその能力を使う他ない。シェイにはオフボールのプレーを要求することになる、クローズアウトに対してドライブをしたり、オープンシュートを打ったりね。でもそれがシェイの負担を軽減することにも繋がるんだ。

 マーク・ダグノート

ギディーによるとそれは監督が独断で決めたことではなく、3人でずっと話してきたことだったとのこと。この試合の前までシェイは足首のケガで欠場しており、その期間でギディーは3試合連続トリプルダブルを記録するなどハンドラーとしてすさまじい成長を見せていた。シェイも「ギディーなら任せられる」と感じ納得した上での作戦実行だった。

(メインハンドラーの時間が増えることは)コーチと3人で話し合ってきた。相手はシェイを徹底マークしてくるからシェイのオフボールでのプレーが増えれば負担が減る、それに自分がメインでハンドルしようがシェイはセカンドハンドラーとしてプレーするしどこでプレーしようが脅威なことは変わらない。(中略)今日はそれが証明できたと思う、シェイはオフボールでのプレーが増えたけど30点以上取ってたよね。一緒にやれることを増やしていけば、チームとして成長できる。

 ジョシュ・ギディー

知っての通りジョシュはこの数週間めちゃくちゃいいプレーをしていた。自分は選手として、ジョシュのプレーを邪魔したくない。リーグ屈指のチームは複数の選手がボールを持ってプレーできることは分かってる、オレたちもできるだけ早くそうなりたいんだ

 シェイ・ギルジャス・アレキザンダー

残念ながらギディーメインハンドラー作戦はこの試合後にギディーが股関節を痛めシーズン全休となったため二度と目にすることはなかったが、今後もこの体制を続けていきたい旨をダグノートは語った。

(これからもシェイ&ギディーが同時出場時にはギディーにメインハンドラーを務めさせるのかという質問に対して)何ポゼッション任せるという数字を明確に言うわけではないがそのつもりだ、100%ね。ジョシュはすばらしい選手で強いチームはいい選手たちが噛み合ったプレーをする、ジョシュはそれができることを証明している。それを進めることでシェイの負担を減らせるし、シェイに別の役割を任せることができる。(中略)まだ我々はそれを模索している段階だし、始めから完璧にいくとは思っていない。でもチームを最高の状態にしていきたいね。

 マーク・ダグノート

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現時点では機能しているとは言えないデュオだが、チームが目指す将来像にチームの明るい未来を感じられずにはいられない。それはチーム期待の新人も同じだ。

シェイとのプレーは大好きだ、ケミストリーはどんどん向上していると思う。数年後にはリーグでも屈指のバックコートになってるだろうね、シェイと一緒に成長していくのが楽しみなんだ。

 ジョシュ・ギディー

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