the grind continues. pic.twitter.com/gY7qRrxPXZ
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 6, 2021
サンダーのサム・プレスティGMはシーズン開幕前の会見で「シェイがワールドカップで得たものがどう活かされるか」を問われるとこう答えた。
様々な経験が選手の成長に繋がると信じている、普段とは違う選手とプレーすることも(成長に繋がる)。だから我々はシーズン中でも色んなラインナップを試している。(中略)「気温が25度くらいで日が照っていて心地よい風が吹いている環境ならいいプレーができる」なんて選手はプロアスリートではない。
サム・プレスティ
ワールドカップのような国際試合でシーズン中と違う環境・ルール・戦術・チームメイト・対戦相手を経験するのは選手の成長にとってプラスになる。プレスティの言葉は単なるワールドカップの総評でなく「いかに自分の殻を破るか」というサンダーの育成理念とも自分は捉えた。
また、プレスティは同じ会見で以下の発言も残している。
“自らのテリトリーから一歩踏み出すのと、テリトリーを広げることは別物だ。例えば、冷たいプールに5分間入ること(=一歩踏み出すこと)は誰にでもできる。でも、毎日15分間入ること(=広げること)はできるだろうか?(中略)選手たちは不確かなものごとに対処できなければならない。”
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ケース ポク
Thunder starters for Game 1
— Joe Mussatto (@joe_mussatto) October 19, 2022
– Shai Gilgeous-Alexander
– Josh Giddey
– Lu Dort
– Kenrich Williams
– Aleksej Pokusevski
Didn’t see that coming!
スターティングセンター:アレクシー・ポクシェフスキー
2022年NBA開幕戦、世界中の全NBAファンが(おそらく世界中の全ポクシェフスキーファンでさえも)衝撃を受けたかもしれない。
ポクは213cmの高さで視野が広くガードのような身のこなしができる選手で前シーズンにはトリプルダブルを達成するなどそのポテンシャルを発揮しつつある選手だった。
しかし、体重は30kgほどしかなくお世辞にもNBAでセンターができるような選手ではなかった(と少なくとも自分は思っていた)。
「タンクのしすぎで遂におかしくなったか」
とさえ思うビックリ起用も先のプレスティの発言を聞くと合点がいく。
ポクはデビューから2シーズンで106試合出て11回しかポストディフェンスをしておらず、センターは経験をしてこなかったまさしくテリトリー外のプレー。それが昨季は34試合で73回と急激に数を増やした。しかも、被FG33.3%はリーグ22位の好成績。
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サンダーの思惑通り今まで経験のないポジションで急激な成長を見せたポク、象徴的だったのは22年11月のセルティクス戦。
この試合ポクは16得点-14リバウンド-3ブロックを記録、マッチアップ相手はルーキー時代のチームメイト アル・ホーフォードだった。チーム練習でもマッチアップしたことがなかったというかつての師匠相手にポクは結果を残した。
いかにポクが成長したか、という意味で傑作だったのは試合後のマーク・ダグノートHCのコメントだろう。
ポクはホーフォードとマッチアップしていたけど、ものすごい対比だよね。ポクがルーキーのときにチームにはホーフォードがいた。
そのときに誰かが私に”2年後、ポクはホーフォード相手に37分プレーしているだろう”と言ったら、その人にアルコールテストをしていただろうね。
マーク・ダグノートHC
https://thunder-quest.com/2022/11/15/2022-23_rs14/
Pick, Roll, POKU!
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 26, 2022
The Thunder built upon its lead with a 21-0 run ⚡️#ThunderUp pic.twitter.com/bFK5MP0ZcZ
ピック&ロールのロールマンとしてはまだまだ未熟、逆に言うとセンターとしてまだ伸び代あり。(ロールマンとしての昨季のポクは0.84PPP、これは50ポゼッション以上ロールマンをこなした選手の中で最低)
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ケース ドート
ルー・ドートのゴール下フィニッシュはひどい、昨季の成功率48.6%は100本以上ゴール下シュートを打った選手の中でリーグ下から2番目の成績だった。
しかし、これは仕方ない一面もある。[グラフ1]は昨季の身長別ゴール下シュート成功率を表したもの、見ての通りゴール下は高さがものを言いドートのサイズ6’4(193cm)では簡単には太刀打ちできない世界と言えよう。
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「ほなゴール下で打たんかったらええやん?」
というのは正論で、実際ドートはコーナー3P成功率3年連続で40%を超えておりスポットアップシューターとしてはそこそこ優秀。
だが、サンダーはそんなドートにゴール下のシュートを打たせ続けている。[グラフ2]の通り、ドートは前シーズンから3Pの割合を減らしゴール下のシュート割合をかなり大きく伸ばした。
またキャリアハイのドライブ回数694を記録している点からもチームとして意図的にドートをゴール下でプレーさせていることが伝わってくる。
苦手だからやらせないのでなく、積極的にそのプレーを経験させる。この方針もプレスティが語る「テリトリーを広げること」に繋がっているはず。
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「せやけど、ドートって2年目からずっとドライブしててゴール下外し続けとるから全く成長してへんやん」
シュートに関しては仰る通り。ただ[表2]で示す通りドライブの質を見るとドートはドライブからパスを捌けるようになりミスも減っていることがわかる。
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これはダグノートHCが語るディシジョンメイクの理念とも合致する成長。
「シュート」という目につきやすい分野で伸び悩んでいるが、ドートはサンダーが掲げる育成理念&戦術の中で着実と歩みを進めている。(もちろんシュートが入れば言うことなしだが)
一度ディフェンスのズレをつくったら、そのズレを活かし続けないといけない、素早い判断がその際の肝になる。シュートを打つべきか、パスをすべきか、ドライブをすべきかその判断がどのポゼッションでも大切だ。
現代NBAはよりディシジョンメイキングのリーグになっている。だから我々は選手の成長のためにキャリアの早い段階から素早い判断が要求される状況でプレーさせている、それができるようになるのはとても大事だからね。
マーク・ダグノートHC
ドートのドライブがめちゃくちゃよくなってる、サンダーのシュートは全然入らないけど
— Ko (@Ko_nba) November 29, 2022
ドライブ時のターンオーバー率は昨季8.0%から今季4.8%、4%台は優秀な数字で平均10回以上ドライブしている選手52人中11位 pic.twitter.com/WigiK1dMi8
ドートの超人的なディフェンス力を最大限発揮するにはオフェンスで穴にならないことが前提、ドートにオフェンスで役割を与えているのは時が来たときのための種蒔き。少しずつ芽が出始めているから花が咲くまでは暖かく見守りたい。サンダーにはまだ見守る時間はあるはずだし、見守るだけの価値があるディフェンスをする選手だと思う。
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まとめ
ポクに今までやってこなかったセンターをやらせ、ドートにずっと苦手としているドライブを任せ成長を促してきたサンダー。
こうした選手のテリトリーを広げることは対象の選手のみならず、周りの選手にも影響を与える。
選手の育成について話そうか。J-Dubは特にそうだったし、ジョシュもアイゼイアも当てはまるけど、我々がスモールラインナップで戦い始めてから選手たちの成長が著しかった。特定のスタイルでプレーすることが成長にも繋がるんだ。
ホーフォードがチームにいたとき、ホーフォードとのプレーがシェイの成長に大きく寄与した。シェイに新しい視点を与えた(=ホーフォードはシェイが一緒にプレーしたことのないプレーをする選手だった)からだ。ケンリッチをセンター起用し始めたときがJ-Dubの成長の始まりだった。
サム・プレスティ
今季も常識に当てはまらない奇抜なローテーションや謎の役割をこなし始める選手が出てくるかもしれないが、それがサンダーの育成方針。そう受け止めファンとして選手たちの成長を楽しみにしたい。
BAZE!! BIG TIME!! pic.twitter.com/QhlRY41CJA
— OKC THUNDER (@okcthunder) January 16, 2022
いい部分だけを書いたけど、ダリアス・ベイズリーにようにできないプレーを強要され自信を失ってしまった選手もいる。本人の実力・努力次第と言えば厳しい言葉になるが、サンダーの若い選手たちはこの育成戦略の中で生き残っていかないといけない。
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ルーキー時代のポクとホーフォード
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